現代の子どもたちを取り巻くスポーツ環境において、深刻な問題となっているのが「待機運動」です。
これは保育園に入れない「待機児童」になぞらえた言葉ですが、スポーツの現場においては「チームに所属しているものの、試合に出られない」「練習メニューの順番待ちが長く、実際に動いている時間が短い」といった状態を指します。
なぜ、幼少期にこの「待機運動」を防ぐ必要があるのか。
マルチスポーツがその解決策となる理由を、科学的な根拠とともに解説します。
1. 「至適強度」と運動時間の確保
運動能力の向上には、心拍数が一定以上に上がる「適切な負荷(至適強度)」がかかる時間をどれだけ確保できるかが鍵となります。
【根拠】 スポーツ医学の研究(MVPA:中高強度身体活動の研究)によれば、子どもの心身の発達において、1日合計60分以上の「息が弾む程度の運動」が推奨されています。しかし、伝統的な種目特化型の少年団などでは、指導者の話を聞く時間や列に並ぶ時間が長く、実際のMVPA(活発な活動時間)は練習全体の30%〜40%程度に留まるというデータもあります。
マルチスポーツを導入する教室では、特定の競技ルールに縛られすぎず、常に全員が何らかの動きを続けるプログラム(スモールサイドゲームなど)を優先します。これにより、限られた時間内で最大の運動量を確保し、身体の発達を促します。
2. 「相対的年齢効果」による選別の回避
早期に一つの種目に絞ると、どうしても「今、体が大きい子」「今、足が速い子」が試合に起用されやすくなります。これが「相対的年齢効果」です。
【根拠】 多くの研究で、少年スポーツの選抜選手は「4月〜6月生まれ」に偏る傾向があることが証明されています。幼少期の数ヶ月の成長差は大きく、早生まれの子や晩熟型の子が「自分は才能がない」と勘違いし、スポーツを辞めてしまう(ドロップアウト)原因となっています。
マルチスポーツは、競技特性が異なる種目を入れ替わり行います。
「走るのは苦手だけど、投げるのは得意」「サッカーでは補欠だけど、ボルダリングでは輝く」といった機会を増やすことで、どの子にも必ず「自分が主役になれる瞬間」を提供します。
これが、スポーツを一生続けるための強い自己肯定感を育みます。
3. 多様な刺激が脳の「飽き」を防ぐ
同じ動作の繰り返しは、脳内の報酬系を鈍化させ、集中力の低下を招きます。
一方で、マルチスポーツのように種目を変え、常に新しいルールや動きに直面する環境は、脳のドーパミン放出を促します。
「待機」という退屈な時間を取り除き、常に脳と体がフル回転する状態を作ることは、運動神経だけでなく、学習面でも重要な「実行機能(集中力や自己制御)」を鍛えることにつながるのです。
結論:「動き続ける」ことが才能を開花させる
子どもにとって最大の損失は、才能がないことではなく、「動く機会を奪われること」です。
当教室がマルチスポーツを通じて「待機運動」をゼロに近づけるのは、どの子の可能性も取りこぼしたくないからです。
列に並ぶ時間、ベンチで眺める時間を、すべて「挑戦と発見の時間」に変える。
この「全員主役」の環境こそが、将来どんな道を選んでも力強く歩んでいける健やかな体と心を育てる最短距離なのです。
5月から各ラボでバレーボールの種目に切り替わります。
ボールを落とさず仲間に繋げる難しさを感じつつ、各動作を経験していきましょう!
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